瞳孔異常 pupillary abnormality |
■ 瞳孔径
計測には簡便な
@この範囲を超えた瞳孔径の大小は,病的である.大きい状態が散瞳 mydriasis ,小さい状態が縮瞳 miosis である.
A左右差が直径で 1.0 mm 以上ある場合,瞳孔不同 anisocoria という.
■ 瞳孔異常
基本は,瞳孔の大きさと形,対光反応と近見反応の観察である.すなわち,虹彩を含めた形態の異常と,瞳孔の静的な異常,動的な(瞳孔運動の)異常がある.特に縮瞳が問題となる.
(詳しくは 神経眼科学の講義で!)
【1】 瞳孔径
- 縮 瞳
左右差によって不同が確認できる程度であるとき,相対的縮瞳という.暗室で瞳孔不同が顕著になり,明室では不同の程度が少なくなる.
瞳孔径が 2 mm 以下であるとき,絶対的縮瞳という.副交感神経刺激による.脳幹病変を疑う(橋性縮瞳).筋肉のジュースは何をするのでしょうか?
- Horner症候群:交感神経障害.多くは片眼(患側の)中等度縮瞳,軽度上眼瞼下垂( Müller筋障害)または瞼裂狭小(下眼瞼挙上),眼球陥凹(だいたい'みかけ'上),患側顔面の発汗減少がみられる.2 mm 以下に縮瞳することは無く,対光反応は保たれている(厳密には散瞳相の延長がある).
- 虹彩炎:三叉神経反射・炎症メディエータのため
- 縮瞳薬点眼:ピロカルピン・・・・副交感神経刺激( pin-hole状態になる
- その他:調節痙攣,Wallenberg症候群(脳血管障害に因る Horner徴候として),先天縮瞳(散大筋の欠如)など
- 両側縮瞳:加齢変化または新生児(正常),視床病変,中心性ヘルニアの初期,橋出血( pin-point pupil ),コリンエステラーゼ阻害薬中毒(有機リン中毒〜農薬,殺虫剤でも),ニコチン,ヘロイン・モルヒネ中毒,両側 Horner症候群,など.
- 散 瞳
明室で瞳孔不同が顕著になる.対光反応は不十分か消失.輻輳させた場合(近見反応)も同じ理由で瞳孔不同は顕著になる.
疲労ドライバ
- 動眼神経麻痺:複視や眼瞼下垂を合併する.原因で特に圧迫によるものは瞳孔障害が起こりやすい.最も警戒しなければならないのは脳動脈瘤〔 IC‐PC (内頸動脈後交通動脈)の頻度が高い〕で,脳神経障害のある脳動脈瘤の約半数が動眼神経麻痺を示す(鉤ヘルニア,中脳障害などでも).
- 瞳孔緊張症 tonic pupil:毛様神経節障害(一側のことが多い)による縮瞳不全.対光反応は微弱〜消失で,分節状に反応する.近見反応は緩慢( tonic )ながら対光反応よりも十分に縮瞳する( light - near dissociation ).片眼性で若い女性に多く,散瞳による羞明や調節障害を伴うが偶然発見されることも多い.
(瞳孔緊張症+腱反射低下= Adie症候群) - 散瞳薬点眼:トロピカミド,塩酸フェニレフリン,塩酸シクロペントラート,硫酸アトロピン,エピネフリン,
- 緑内障発作,鈍性外傷:括約筋の損傷のため,中等度散瞳し対光反応を欠く.
- 逆Horner:一側の散瞳,瞼裂拡大,
- 両眼散瞳:若年者(正常),感情(驚き,喜び,怒り,恐れ,不安,など)の変化,両眼性瞳孔緊張症,アルコール中毒,重症低酸素血症,抗コリン作動性薬物の投与,三環系・バルビツール酸系薬剤中毒,コカイン・アンフェタミン中毒,汎自律神経障害( pandysautonomia ),Parinaud症候群(中等度散瞳)その他の中脳視蓋病変,など.
- 瞳孔径の動揺( hippus )
その他:群発頭痛,片頭痛
【2】 対光反応の異常
ポリオの広がりはどのように速くない
対光反応には直接反応(光刺激眼でみられる瞳孔反応)と間接反応(他眼でみられる瞳孔反応)とがあり,等量に反応する.迅速であるか,反応量(縮瞳の程度)が十分であるかをみて,「迅速かつ十分」などのように表現するのがよい.光源が左右等量に入っていないと判定を誤るので,光源を固視するように命じ中心窩に光が当たるようにして調べるのがコツ.一般に間接反応の判定は容易ではない.
求心路障害では,障害側からの光刺激に対する直接反応,(他眼の)間接反応ともに障害されるのに対し,遠心路障害では直接反応と他眼からの間接反応が障害される.これらにより(他眼からの)間接反応が正常であれば視神経障害,減弱していれば副交感神経障害と判定する.
左右の対光反応を比較する交互点滅検査( swinging flashlight test )では,求心路障害のある(または障害のより強い)側に光源を入力したときに散瞳し,他側(健側)では縮瞳する.散瞳した側に「相対的求心路瞳孔反応障害」( relative afferent pupillary defect:RAPD )があると表現する.または散瞳してくる状態(患側)を,Marcus Gunn瞳孔という.
求心路瞳孔反応障害( afferent pupillary defect )は,視神経障害あるいは広範囲な網膜障害を示唆する.
相対的求心路瞳孔反応障害:視神経疾患(片眼性か障害に左右差のある場合)で重要.一眼の広範な網膜障害(網膜中心動脈閉塞症など)でもみられる.
瞳孔硬直 stiff pupil
- 黒内障性瞳孔硬直
一側の視交叉より末梢の障害で完全に失明し,患眼の直接対光反応と健眼の間接対光反応が消失した状態. - 半盲性瞳孔硬直
半盲側の網膜に光を当てた時,対光反応が出現しない現象.対光反応求心路線維が視索から分かれる手前での視路障害による.実際にはあまりきれいな所見は得られない. - 絶対性瞳孔硬直
直接間接の対光反応と輻湊反応が消失した状態.Edinger-Westphal核,その遠心路または瞳孔括約筋自体の障害による.調節障害が加われば内眼筋麻痺となる.
- 黒内障性瞳孔硬直
▶ light‐near dissociation:対光反応欠如,近見反応正常.
・Argyll Robertson瞳孔ではの中脳上丘レベル,後交連を含む視蓋前域の障害.神経梅毒のほか血管性障害,糖尿病,脳炎,多発性硬化症などによる.瞳孔は不整形に縮瞳.通常両側で視路障害はまぬがれる.
・瞳孔緊張症では,毛様神経節障害の跡が回復するときに毛様体筋支配神経のほうが残りが多いため調節神経が瞳孔括約筋へ異常再生し,近見反応が起きる.
【3】 近見反応
対象までの距離情報は,像の「ぼやけ」と「両眼視差」である.これらの信号には大脳がかかわり(縮瞳中枢がある,とのこと),輻湊がおきる.
【& 神経回路の復習】
【4】 瞳孔の形,位置の異常
先天的異常として,ⓐ無虹彩 aniridia(先天性緑内障や Wilms腫瘍の存在に注意),ⓑ瞳孔偏位(瞳孔が中央からはずれ,しばしば円形でなく瞳孔反応も弱い.中心窩低形成を伴うことあり),ⓒ虹彩欠損 coloboma(下方の虹彩が欠如,下方ぶどう膜全体の欠損例もある),ⓓ瞳孔膜遺残 persistent pupillary membrane remnants ,ⓔ多瞳孔,ⓕ先天縮瞳 congenital miosis などがある.
後天的には外傷,内眼手術の既往,ぶどう膜炎(虹彩後癒着による変形),黒内障性散瞳,緑内障性散瞳,梅毒(不整円,Argyll Robertson瞳孔)によるものがある.
【5】 随伴症状
ⓐ羞明があると:動眼神経麻痺,瞳孔緊張症(Adie),外傷性散瞳
ⓑ近見障害があると:動眼神経麻痺,瞳孔緊張症,外傷性散瞳
ⓒ眼瞼下垂があると:
・散瞳眼では動眼神経麻痺,
・縮瞳眼では Horner症候群
ⓓ複視があると:動眼神経麻痺
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○散瞳薬:
副交感神経麻痺⇒コリン作動神経遮断,アセチルコリン作用の抑制
交感神経刺激⇒アドレナリン作動神経刺激
縮瞳薬:
副交感神経刺激⇒コリン作動神経刺激,括約筋受容器を直接刺激
交感神経麻痺⇒コリンエステラーゼ阻害(抗コリンエステラーゼ)
【& 自律神経の復習】
○散瞳薬の反応不良:加齢,糖尿病,偽落屑症候群,・・
○瞳孔の検査は,暗所で検査する.日本人では虹彩色素が多く瞳孔の視診がしにくいが,半暗室で患者に上方視させて弱い照明を当てると判定しやすい.明所では,左右差・対光反射などがわかりづらい.
◎Horner症候群の発生機序と病態(NIS:No.4176(2004/5/8);pp.96-97)
Horner症候群は視床下部より眼部に至る交感神経経路の障害によって縮瞳、眼瞼下垂、無汗症を生ずる疾患である。 交感神経 は三つのノイロンよりなる。視床下部より脳幹部を下降し、Budge毛様脊髄中枢(第8頸髄、第1胸髄、第2胸髄)に至る中枢(第一)ノイロン、 ここより出て星状神経節を通り主部は鎖骨下動脈の下を潜って上行し、上頸神経節に至る節前(第二)ノイロン、 さらに上頸神経節より出て眼球などの末梢器官に分布する節後(第三)ノイロンである。いずれのノイロンの障害でもHorner症候群を来たすが、症状に若干の違いを生ずる。中枢ノイロンが障害された場合を中枢障害、節前ノイロン、節後ノイロンの障害をそれぞれ節前障害、節後障害と呼ぶ。
Horner症候群の縮瞳は交感神経支配である瞳孔散大筋の麻痺のため生じる。縮瞳は中等度(0.5〜1mm)で、大半の症例は片眼性のため瞳孔不同を来す。 副交感神経は正常で光に対する縮瞳は十分で、よって縮瞳は暗所で起こり、瞳孔不同も暗所で著明となる。上眼瞼瞼板筋(Müller筋)も交感神経支配のためHorner症候群では軽度の眼瞼下垂(1〜2mm)が起こる。また、下眼瞼の瞼板筋も同様であるため、下眼瞼のわずかな挙上もみられる。
交感神経は発汗を起こすので、Horner症候群の障害部位により無汗症が異なった部位に生ずる。 中枢障害では半身の無汗症、節前障害では顔全体から首にかけての無汗症、節後障害では無汗症が出ないか、あるいは前額部から鼻の内側の部位に限られる。 これらの違いは発汗運動線維の走行が眼交感神経線維と異なることによる。発汗運動線維は血管運動線維と同じ経路を通るので、節前障害の場合、障害が生じて間もない頃は皮膚細動脈の収縮が障害されるため、顔面皮膚の紅潮や温度上昇、結膜充血がみられる。時間が経つと、逆に皮膚の蒼白や温度低下を来たすようになる。これは交感神経障害による神経除去後過敏が血管平滑筋に生ずることに由来する。
Horner症候群の診断および障害部位の特定は原因を精査する上で重要である。これには点眼試験が有用である。 用いられる薬剤は交感神経作動薬剤の5%コカイン、5%チラミンおよび1%塩酸フェニレフリン(1%ネオシネジン)または0.04%塩酸ジピベフリン(0.04%ビバレフリン)である。 各々の判定時間は90〜120分、45分および60分である。5%コカイン点眼をすると正常眼は散瞳するが、Horner症候群では散瞳しないか、散瞳が減弱する。 5%チラミン点眼をすると中枢および節前障害では散瞳するが、節後障害では散瞳が減弱〜消失する。 1%塩酸フェニレフリンまたは0.04%塩酸ジピベフリン点眼では中枢障害では散瞳しないが節前および節後障害では散瞳する。また、下垂した上眼瞼が10分前後で挙上される。これらの現象は前述した神経除去後過敏が獲得されるために生ずる。
Horner症候群のの障害部位を決定した後は病因を精査する。 中枢障害の病因としては腫瘍、血管障害、外傷が多く、他の全身症状を伴うことが多い。しかし、脊髄空洞症は他の症状を伴わないので注意が必要である。 節前障害の病因は腫瘍が多く、肺癌、乳癌、縦隔腫瘍、甲状腺癌などがある。次には外傷や外科的処置により起こることが多い。 上腕神経叢に対する外傷、気胸、頸部や縦隔の腫瘍摘出術などが報告されている。節後障害は内頸動脈に沿った部位で生ずることが多い。内頸動脈の解離性動脈瘤、内頸動脈近傍の腫瘍や圧迫性病変、炎症などで生ずる。 また、内頸動脈は海綿静脈洞を通るので、海綿静脈洞の腫瘍、炎症、感染、動脈瘤などが原因となる。特に外転神経麻痺を伴った場合は海綿静脈洞病変を精査すべきである。 (堀尾直市氏の記述を引用)
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