自宅に白拍子を呼んで、自作の歌に合わせた舞を楽しむ忠通。
「わたの原 漕ぎ出でて見れば ひさかたの ……」
ここで為義の手勢が乱入したため、つづく「雲居にまがふ 沖つ白波」はおあずけに。
為義は忠実の命令どおり、藤原摂関家の氏の長者のあかしである朱器台盤を強奪。
この手の家宝を見せてくれるところは、『太平記』もおよばぬおもしろさだと思う。
ほくそえむ忠実と頼長の背後でにたにたする為義が悲しい。
どーせ、十分なねぎらいの言葉もかけてもらえなかったであろう。
最近デフォルトで不機嫌な東国の覇王が吠える。
「父上のしたことは、ただの盗賊と同じでござります」
実況では「おまいが言うな！」の嵐だったにちがいないが、義朝は自分の意志で源氏の利益のために
人の領地や館をぶんどってきたので、摂関家のいいように扱われている父親が歯がゆいのだ。
鳥羽院御所で。
そのうちお前を刑部卿にしてやる、と餌をちらつかせる鳥羽院� �
とりあえず、清盛の安芸守就任は決定済みのようす。
家成の「あとひと息ですよ」は、先週の忠盛の「あとひと息じゃ」を受けているのだろう。
あれから忠盛の意識は変わっているので、単純に喜べない。
廊下ですれ違う忠盛と為義。
ここで経済的に恵まれた平家と差をつけられた源氏について説明しているのだけど、
わかってね皆さん。
殿上闇討ち事件のさい、平家と源氏、どちらが強いか、その勝負は朝廷に対し
じゅうぶんな力をつけてからでいいのでは？という忠盛の言葉を
為義が覚えていたなんて!!
忠盛が忘れていたなんて!! 源氏などとっくに眼中にないってことですね。
ファーストフードとうつ病
せき込んで倒れる忠盛、床に伏せる。
はじめて現代でも見るような白地に水墨画っぽい襖を見た（今まで気づかなかっただけかも）。
薬師の見立ては過労らしい。
厳島社司、佐伯景弘登場。ぬっくん、嵌り過ぎだ。
神社は尋常でないさびれっぷり。のちのち清盛が増築してあっと言わせてくれることを期待。
歓迎の舞の白い衣装も髪飾りも興味深い。
安芸の国は船造りがさかんで、遣唐使時代は百人乗りの船も造られた、と聞かされる清盛。
大々的に日宋貿易に乗り出すさいは、これが回想シーンになるのか。
老いた忠盛は家貞に、夢中で生きてきたが舞子の言うように「なぜ太刀をふるうかわかる」
ことはなかったと語る。初回 、正盛が「武家は王家に仕えておる。そのために太刀を帯びて
おる。そこには『なぜ』などと疑いをさしはさむ余地はない」と忠盛をいましめた。
この"有無を言わせなさ"に対抗できるものを、まだ今年の大河は見せていない。
義朝邸で戦闘集団が鍛錬にあけくれている。
ふんどし軍団に稽古をつける義朝は、なぜ片肌すら脱がないのだらうか。
昼のシーンからくどい胸筋見せられても胸焼けしそうだから、まあいいけど。
本人が危惧したとおり、慣れない内裏勤めで苦労している常盤が映る。
直後に統子内親王とおそばにつかえる由良が映る。
内親王を演じる愛原実花さん、評判にたがわぬ気品ある台詞回しに惚れ惚れ。
「家の中が丸くおさまるよう、仲を取り持つが妻のつとめじゃ」
独身なのに こんなこと言うのおかしいという人は、人間の想像力や思考力の価値がわかっていない。
亭主と喧嘩中でもないのに由良がぎすぎすして見えるのは
演出家の意向か、撮影照明の問題か、演技力不足ゆえか？
口調ももうすこし時代劇らしくゆったりさせてほしい。
内覧の宣旨をたまわった頼長。
ヤマコーの歩き方、なんかヤンキー入ってる気がするんだが、これでいいのか？
帝の御前で使えないヤツの粛清（粛正よりこっちだと思う）を言上する。俄然張り切っておるなぁ。
美福門院がはじめて白い衣装をまとっている。中身は黒くなるいっぽうなのに。
安易な仕返しを図る忠通をおしとどめ、あの頭でっかちを暴走させたほうが
こちらの得になる、と語る。頭冴えまくりですな。
安芸の国から帰館� �た清盛。
お辞儀する生田のお尻があがりすぎていることに注目した。
忠盛が病気と聞いて大慌てで駆けつける清盛。この対面シーンはとても
三十男とその父に見えない。まるで小学生と甘いパパである。
「野良犬の声がこの世をおもしろうする」とはしゃぐ清盛。
おもしろいはともかく、野良犬はしばらく言わなかったので、唐突感がある。
肥満の責任薬品
清三郎は重い宋剣を持ちあげようとして、すぐ疲れてしまう。お坊ちゃん育ち丸出しだ。
清盛の子で上出来な息子は重盛のみ、役に立ったのは娘たちだった。
いつも楽しい清盛邸から場面変わって、たいてい楽しくない義朝邸へ。
「たまには夕餉をともにしたいと思いまして」
親子仲を取り持つべく為義を招待した由良に向かって、奥さん、お気持ちわかりますよ的
にうなずく正清。苦労しとるなー、男堀河か？ 主が強すぎるところがちがうけど。
体の倍の長さがある弓で何度も矢を射ろうと粘る鬼武者。
へなちょこ清三郎と正反対。義朝の息子たちは優秀な武士だった。
「（ボクは父上に）そっくりにござります」
かわいい五歳児の言動に� �ごむ大人たち。しかし、一瞬ののち……。
為義と義朝と由良が同じ場所で笑顔を浮かべるのはこれが最後かもしれない。
家成邸を襲撃せよとの頼長の命令を伝えに来る通清。
「行ってはなりませぬ」と止める義朝。ここのところ息子の前に出ると
獅子に睨まれた兎かドーベルマンに吠えられたチワワ状態だった為義が
猫パンチ程度の威力しかないにせよ、とにかく息子を殴る。
小さな親父が歯向かってきたのでショックを受ける義朝。
「殴ったね！ お袋にもぶたれたことないのにー！」（ちがう）
俺は地を這ってでも生きる！と宣言する為義。自分の非力は自覚しているのだ。
忠盛並みの成功譚ばかり出すより、凡人の意地も描くほうがおもしろい。
番組始まって以来、初の弱った顔で常盤のもと を訪れる義朝。
風が吹いて砂塵が舞う背景は、風がふきすさぶような義朝の心中を表すのか。
「お父上と喧嘩なさったのですね」は強引かもしれないが
「親の役に立てるのは、なにより嬉しいことであろう」を受けているのだからぎりぎり許容範囲。
父親への気持ちをわかってくれる女を、思わず抱きしめる義朝。
これまではおのれが背負っているもののために計算や義務感で――と言ったって、しょせん
趣味と実益を兼ねているわけだが――あるいは肉欲にかられて女を抱いてきた男が、
はじめてホモサピエンスらしく右脳で恋をした瞬間。
犬の嘔吐の命令を誘発する
なぜ義朝が男らしく見えるかといえば、戦闘能力にすぐれているとか積極性があること以外に
自分の内面に拘泥しないことも大きいと思う。たぶん、自分に「気持ち」なんてものが
あるとは思わずに生きてきたタイプ。乳兄弟というのは主人の愚痴の聞き役でもあるはずだが
東国の場面を見るに正清のほうが先にへばってしまうのと、もともとの気性で
家来に弱気を見せる習慣もなかったと思われる。清盛は女房の前で「寂しいのじゃ」とこぼすが
義朝は口が裂けてもそんなことは言えないだろう。
そんな男がめずらしく弱ったとき、気持ちが通じ合う女性がいたら参ってしまうのは当たり前である。
あの時代なら「綺麗だから側室にした」 でかまわないはずなんだが、現代的エクスキューズとして
優しさに惚れたことにしたわけか。しかしすでに正妻連合が由良御前の肩を持っていろいろと
コワイ。
荒ぶってても弱ってても色気が漏れる俳優さんだが、今回は夜8時台にさしさわりない程度の
フェロモン量であった。武井さんも情感のあるいい演技だった。
頼長の手勢に屋敷を襲われた家成が、片手で碁石をじゃらじゃらいわせている。
「うつけものめ、まんまとひっかかりおって」を無言の芝居で見せる佐藤二朗さんが好きだ。
頼長を襲わせる大義名分ができた美福門院が、平氏に襲撃を命じる。
そうすれば早く公卿にしてやる、というおいしいお言葉つき。
「もう聞きあきた気もいたしまするが」
積極的に行動するタイプではなくシニ カルだが、状況を見る目はある頼盛。
清盛は断るべきだと主張する。
海賊討伐、博打場での喧嘩、強訴退治、白河院御前での舞といった場面で宋剣を
振り回してきたが、この剣は院と摂関家の小ぜりあいに巻き込まれるために
生まれてきたのではない、そんな気がする、と語る。
かなり説得力に欠ける。じゃあ、なんのために生まれてきたの？
美福門院を敵にまわさぬようのらりくらりと言い逃れをする
ためのずるいテクニックも描いてほしいものだが
ここは父たる忠盛が「武士の世を作るために、われらは太刀をふるって生きてきた」と
引き取る。
忠盛が死ぬ前のまとめに入る。
息子たちに鎧や剣を授けるが、一人ずつ返答の文言がちがうのがいい。
この大河は、この手の場面で人件費を削らず、おおぜい家人をはべらせているところにも
好感が持てる。
家貞は「わしが死んでも出家しないで平家をささえよ」と言われる。
あー、よかった。私にとっては家貞が平家の頼みの綱なので。
ここでようやく清盛が棟梁であると明言する忠盛。
宗子もだまってうなずく。頼むから、と～～ぶん（例の嘆願助命まで？）は怨念爆発させないでね。
まだ100%は晴れてないと見たよ。藤本脚本はけっこうグジグジしてるからなぁ。
忠盛、次は奥さんとのまとめに入る。
よろめいたところを宗子にささえられて「かた� �けない」
あたしゃ一瞬、忠盛ボケちゃったのかと思ったよ。
「ありがたいと思うておる。一緒になってからずっとな」
アメリカ人じゃないんだから、なんでもかんでも口にしなくていいと思う。
このパターン、あと何回やるのかね。くどい繰り返しは好まないのだが。
安芸の海辺の清盛。
忠盛と木切れで剣術ごっこを楽しむ。
「強うなったな、清盛」
忠盛の言葉がこれだけ、というのがいい。男親が息子を認める言葉はこれだけでいい。
父の幻影が消え、かわりに砂に突き立つ宋剣が映る。
力の象徴たる宋剣を引き抜く清盛。今度こそアーサー王っぽく変身する……とも思えぬが。
清盛の雄たけびのあと、遠くかもめの鳴き声が聞こえ
それから静寂が流れる。
この幕切れは粋だと思う。
軽やかなBGMもよかった。
戦で死ぬ男の最期は映してほしいが
畳の上で死ぬ男の最期は映さなくていい。
死者の布団を囲んで大泣きする家族を映せば視聴率アップという姑息なのは民放くさくて嫌いだ。
広々とした浜辺で主人公と父が語り合う場面は、
同じ渡辺D演出『龍馬伝』の『遥かなるヌ―ヨーカ』と似通っていた。
湿っぽくならずに一つの時代が幕引きされて、後味がいい。
「強うなったな」は、初回の「死にたくなければ、強くなれ」を受けているのだろう。
が、今のところ、これを聞いて期待したような力強さが満ち満ちている作風ではない。
思慮深いブロガーさんのご意見で、この作品に小さなカタルシスを望むべきではない
すべては大きなカタルシスまで溜めてあるのだ、というのが� ��った。
その言葉を信じたい。
中井氏について身近な人間と話題にするときは「佐田啓二はかっこよかったのに」とか
「佐藤の浩ちゃんや真田にくらべるとなんだかな～」の枕詞抜きにできなかったものだが
今回の忠盛演技はよかった、というのが一致した意見である。第四回がピークだったがな。
カッパ呼びは今後もやめられそうにないけど、今夜も『サラメシ』見るからね。
次回更新は五月一日の予定。
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